「”知床どり”を使った鶏肉料理はウチの看板メニューのひとつ。本当に困りました」
こう嘆くのは、札幌市で居酒屋を経営する男性だ。
網走市にある、日本ホワイトファーム知床食品工場。
11月9日に火災が発生し、工場の稼働は停止。幸いにも人的被害はなかったものの、網走への影響は計り知れない。
しかし…網走市の水谷市長をはじめ市役所の動きは鈍い。まるで他人事のようである。

欠かせない存在
日本ホワイトファームのHPによると、同社は1981年に設立し、ニッポンハムグループの養鶏事業を担っている。
網走には、同社知床事業部の工場が2つあり、このうち1つの工場が先日の火災に見舞われた。
火災した工場には「数百人が働いてた」(議会関係者)らしく、その大半は現在、仕事がない状況だという。
同社のオリジナルブランド「知床どり」は、多くの人に愛される鶏肉だ。
メイドインジャパンの鶏肉という安心感に加え、その肉の美味しさは多くの人を魅了する。
市内関係者によると、網走市は昭和50年代後半、鶏肉ブロイラーの市内誘致に力を入れていた。
誘致の目的は、「地域経済の活性化」と「雇用の場」の創出である。
当時、東京に出向いて日本ハムなどの関係者などに”交渉”を試みた男性(現在80代)は「鶏肉ブロイラーの誘致活動の一環として日本ホワイトファームの網走進出が決まったと記憶している」と振り返る。
実際、日本ホワイトファームの網走進出後、網走の工場からはオリジナルブランド「知床どり」をはじめとする鶏肉が市内外のスーパーなどに届けられるようなった。
また、工場は地元住民らの働く場所となり、同社は数百人単位の「雇用の場」を創ってくれたことに間違いは
ない。

陣頭指揮
網走の工場が火災に見舞われ、鶏肉が出荷停止となってから2週間以上が経過した。(この記事の出筆時点)
網走市や北見市など、同社の鶏肉を学校給食の献立メニューに取り入れている自治体は多い。先日のNHKニュースでは、北見市教委発表のような形で、市内小中学校の学校給食に同社の鶏肉が提供できなくなったーと報道され、世間も事の重大さを認識するようになった。
一方、同社工場があり、”お膝元”とも言ってよい網走市(水谷市長と市役所)の受け止め方は極めて冷静だ。
”冷静さ”の事例を挙げてみると…
まずは学校給食についてだが、北見市教委は、NHKニュースでも報道されたように、鶏肉の出荷停止に伴った学校給食の献立問題について早い段階で対策を練っていた。
一方で、網走市教委の動きは鈍く、火災発生の翌朝には「鶏肉の出荷停止」という第一報を受けているにも関わらず、即座に関係者(小中学校の給食担当者や給食調理員、保護者、精肉店など)と情報の共有を図ろうとした形跡は見られなかった。
火災発生時から取材を続ける地元メディアの記者は「火災発生からの数日間、水谷市長や教育長が出荷停止問題の対策に向けて陣頭指揮を執った、という情報は全く入ってこない」とし、「驚くのは、『給食に同社の鶏肉は当面、使えなくなる』という、一刻も早く伝えなくてはいけない情報伝達を、市教委は職員以外の民間人に任せていたという実態ですね」と教えてくれた。
水谷市長は網走市政のトップである。
今回の火災による鶏肉出荷停止、という情報を耳にしてから、行政の長である水谷市長は何を考えたのか?
「鶏肉が出荷できなくなった」→「学校給食に提供できなくなる」→「市内の小中学校(児童生徒含む)、保育園(園児含む)などは困る」→「網走市としての今後の方針を即座に示す必要がある」
上記に示したのは、市政トップが思いつくであろう”思考の順番”である。
しかし、水谷市長は上記に示したような”思考の順番”に基づいた陣頭指揮は執っていないようだ。
それは、現時点での網走市役所の市民(日本ホワイトファームや従業員含む)に対する姿勢が証明している。水谷市長は強力なリーダーシップを発揮して、今回の火災に伴った地域経済対策、雇用問題などを解決するつもりはあまりないようである。
光を灯して
今回の火災を受け、「給食問題」や「地域経済へのダメージ」「雇用問題」に対し、水谷市長はあまり関心を示さない一方で、網走市議の数人は市民に寄り添った活動を続けているようだ。
ある市議は「日本ホワイトファームは網走には欠かせない企業。議会人として、今回の火災は他人事ではなく、網走市の問題として受け止めています」と話す。
別の市議は「工場で働いていた市民からいくつかの相談を受け付けている。困っている市民は少なくない、というのが実態です」と危機感を募らせる。
12月には定例市議会が開催され、一般質問が行われる。
市民に寄り添っている議員は、どのような質問をするのだろうか。
水谷市長を応援する保守系議員らは”ヨイショ質問”ばかりせず、水谷市長の市政運営のまずさも追及してほしいものだ。
政治家である市議の大事な仕事は「懸命に生きる市民に光を灯してあげる」ことだと思っている。



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